シンプルなデザインについて思う事

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「シンプルなデザイン」について

「シンプルなデザイン」で何を連想するでしょうか。
スッキリした感じ
飾り気のない感じ
色数の少ない感じ
いろいろあると思います。これらは確かにシンプルな物を構成する要因となるかもしれませんが、本質を突いていません。

シンプルな物とは、洗練された物の事を言います。
伝えたい一点が強烈に伝わるよう、余計な情報をそぎ落としてそぎ落として必要な情報だけにしていく。
その結果として、スッキリして見えたり、余計な飾りがなくなったり、色数も抑えられたりするのです。

デザイン業務に携わっていると「シンプルでいい」と言われることが時々ありますが、シンプル=簡単という図式は成り立ちません。
「シンプルでいいからとりあえず作ってみてほしい」という要望・・・「難しい機能はとりあえず省いて、シンプルな物をサラッと作って欲しい」という要望ですね。これが本当に難しく、時間がかかります。
コストを下げたり、短い期間でひとまずの雰囲気を見たい、などの思いから「シンプル」という言葉を選んでいるのだと思いますが、本当にシンプルな物を作るには、複雑な物をデザインするよりも難しく、時間もかかります。
シンプルなデザインにするには、無駄を極限まで削り洗練させていく必要があり、とても高いレベルの技術が必要となります。
「ラクに作れて時間もかからないもの=シンプル」ではないんですね。

あっさりして見える物があっさり作られているわけではない
あっさりとして見える物って結構ありますよね。でもそれが短い時間であっさりと作られたのかと言えばそれは間違いです。
そんなに簡単に作られた物があっさりと受け入れられる程、甘くはありません。
あっさりと、簡単に作られていそうな物は、そう見える様に作られているんです。

例えば「名刺」コレは見た目に反して難しいデザインです。
学生時代の最初の課題で名刺を作る課題がありました。
社名と名前、住所、電話番号を55×91mmという限られた空間に配置する課題でした。
簡単そうに見えますが、いい感じにレイアウト・デザインする事が難しく、悩んだ記憶があります。
当時は満足しましたが、その1年後にもう一度同じ課題を行い、作った名刺を比べてみると、最初に作った物が恥ずかしく、見るに耐えない出来だったことも覚えています。

最終的にシンプルに見える形にアウトプットされるまでには、かなりの労力と時間が使われています。それはその物に求められた機能や目的を達成するために、最も効率的な形や不要な情報・機能を整理し尽くし、妥協を許すことなく物の本質を捉えたものが結果としてシンプルなデザインになるからです。それは一切のごまかしの効かない世界です。
多くの言葉や写真を使って説明したり表現する事よりも、一言で伝える事の方が難しいのと一緒です。
時間を1時間を使ってプレゼンするのと、5分を使ってプレゼンするのは5分の方が難しいですよね。資料を用意して、限られた時間を効果的に使う方法を模索するにはものすごい準備が必要になります・・・
ゴテゴテと情報を盛りに盛るよりも、削る方が難しいという事が分かると思います。

シンプルな物は構造が簡素ということはない
シンプルに見える物は、構造が簡素かというとそんなことはありません。
デザインを作り上げるには様々な要望や必要となる機能など、複雑で様々な情報が必要です。それらを単純に全て満たそうとするとものすごく複雑な物ができてしまいます。
それを整理づけ細部まで気を配って洗練していったものが、すごくシンプルに見えるんですね。
一見シンプルに見えるものでも、細かな部分までよく観察してみると、意外と洗練され尽くしていない事があります。
それでも全体的にまとまってシンプルに見えるのは、それを作ったデザイナーが一流の仕事をしたからでしょう。

一つのデザインが完成するまでの裏側には、たくさんのアイデアが隠れていることは良くあることです。
たとえ1枚の絵を仕上げるのに20分程しかかかっていなくても、その域に達するまでには何年もの努力があります。
「ローマは一日にして成らず」ということわざが当てはまりますね。あっさりとして見える物は短期間で作れるようにはなりません。

シンプルなデザインの持つ威力について
シンプルな物は余計な情報を削ぎ落して洗練された物です。
それはデザインした物の意図が人に「スッ」っと伝わりやすいという効果があります。そしてそれは持っていて・使っていて心地いい。
さらに分かりやすく・使いやすい。さらに操作がある物の場合、利用しやすいので多くの人に受け入れられる物が多くあります。

シンプルな物はある種の美しさも兼ね備えていますね。同時に心地よさも感じさせてくれます。それは余計な物を省いて洗練されているからでしょうか。
身の回りにある「シンプルに見えるデザイン」や「長年愛されている物」を細部まで観察してみるのも面白いかもしれませんね。
「自分はなぜこのデザインをシンプルだと思うのだろうか」とか、「何がシンプルだと思わせるのだろうか」とか考えるとシンプルさをうまく引き出す方法が見つかったり、洗練させていく手段・方法が見つかるかもしれません。
シンプルな物を作って、利用者に愛される、心地いい物を一緒に目指してみましょう。

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