単なる使いやすさ以外のユーザビリティを考えよう
ユーザビリティとは操作性に配慮した作りを差しますが、それだけではユーザビリティが高くなるというものではありません。
相手の状況や心理にも配慮して、ボタンの名称を考えることや見てもらいたい人に合わせた言葉の選び方を考えることもユーザビリティを高めることにつながります。
例えばショッピングサイトを例に考えてみましょう
皆さんと同じように私も、インターネットで買い物をしたことがあります。
初めて購入しようと考えた時は、住所や電話番号などの個人情報の入力が怖くて、なかなか踏み出せませんでした。
特に怖かったのは「新規登録」のボタンです。
なぜかというと、「登録した情報が悪用されるんじゃないか」「変な営業電話・メールが来るんじゃないか」「何を登録させられるのだろうか」という不安がどんどん膨らんでしまったからなんです。これは小中学生のころ、「インターネットには個人を特定できる情報や写真を載せてはいけない」と教えられたことも影響しているのかもしれません。
購入するためには商品を届ける先の住所、届け先の人物、購入をしたことを確認するための連絡先など、個人情報の入力がどうしても必要になります。
その時に不安な気持ちになってしまっては、購入を決めるにはものすごく勇気が必要ですよね。
インターネット通販に不安を感じてしまったなら、実店舗に流れてしまうのは簡単に想像できるでしょう。
実店舗であれば名前や住所、連絡先を教える必要がなく、シンプルにお買い物をする事ができます。
ボタンの名称を「新規登録」から「次へ」や「今すぐ購入」に変えたらどうなるでしょうか
インターネットでお買い物をする時に個人情報の入力が必須ですが、会員登録は必須ではない場合がほとんどです。
会員登録しておけば、次回購入時に個人情報の入力が不要になったり、購入した商品を一覧で確認する事ができるので非常に便利になりますが、お買い物をするだけなら会員登録しなくてもできるわけです。
でも初めてインターネットでお買い物をする人はそのことを知りません。
なので「新規登録」というボタン名称だけを見てクリックする事をやめてしまうんです。
この、ボタン名称に関するこんな話があります。
それはショッピングサイトのボタン名称を変えたら売上が伸びた、というお話です。
あるショッピングサイトで「新規登録」ボタンを「次へ」ボタンに名称を変えて、ボタンの下に「商品の購入には会員登録の必要はありません。もしも会員登録していただければ、次回の購入時には情報の入力を省くことができるので楽に買い物ができます。」と会員登録しなくても購入できる事と、会員登録した時のメリットを伝わるような文面を付け加えただけ。とてもシンプルなアプローチです。
「たったそれだけで売上が伸びるの?」と疑問に思うかもしれませんが、初めてショッピングサイトを見た時、自分自身が感じた不安を思い出してみるとそこまで不思議な事ではありません。
相手が少しでも不安に思ってしまうような表現を控えたり、「商品を購入するページなら商品購入以外の情報を省く」「お問い合わせを受け付けるページならお問い合わせ受付以外の情報を省く」といったページ構成を考えることも、ユーザビリティを高めることにつながります。
正しいユーザビリティの定義について
ユーザビリティは際標準化機構の国際規格(ISO 9241-11)によって定義されています。
特定の利用状況において、特定のユーザによって、ある製品が、指定された目標を達成するために用いられる際の、有効さ、効率、ユーザの満足度の度合い。
・有効さ (effectiveness): ユーザが指定された目標を達成する上での正確さ及び完全性。
・効率 (efficiency): ユーザが目標を達成する際に、正確さと完全性に費やした資源。
・満足度 (satisfaction): 製品を使用する際の、不快感のなさ、および肯定的な態度。
・利用状況 (context of use): ユーザ、仕事、装置(ハードウェア、ソフトウェア及び資材)、並びに製品が使用される物理的及び社会的環境。
※引用:http://www.usability.gr.jp/whatis/definitions/
例えばあるショッピングサイトでお買い物をするとします。
もしも探している商品を見つける事ができなかったり、似たような商品を間違えて購入してしまう可能性が高ければ、そのショッピングサイトは「有用性に欠ける」ページかもしれません。
また、欲しい商品を買う事ができても、探し出すまでにかかる時間が多くかかってしまっては「効率に欠けている」ページになるかもしれません。
ショッピングサイトを利用しているときに感じる使いにくさや、ページの表示にかかる時間、商品説明の足りなさに対して不満を感じたりイライラしてしまうなら「満足度を下げている」と言えるでしょう。
「有用性」「効率」「満足度」を基準にユーザビリティを確認してみると、新しい発見があるかもしれません。
また、ショッピングサイトの場合では「初めて利用する人」と「以前利用したことのある人」ではページに対して感じる要素が異なるので、様々な利用者の立場に立って考えてみることをお勧めします。
まとめ
・ユーザビリティの高いページは操作性以外にも見ている人の感情を考慮して作られている
・わかりにくい表現は控える
・不安にさせる表現は控える